◆西洋医学と東洋医学
西洋医学と東洋医学は考え方が根本的に違います。西洋医学は、19世紀後半に発展した近代医学で、投薬や手術により、悪い部分を取り除いて治すことを主とした治療法のことです。 西洋医学では、患者の状態を検査によって数値化し、数値を平均値と照らし合わせて分析します。血液検査などのデータを分類整理し、データに基づいて対処をしていく療法です。数値から症状の原因を導きだし、症状の原因となっている病巣を排除する治療を行います。特に日本では西洋医学が主流となっています。 西洋医学では、個人よりもデータを優先していくのが特徴です。一方、東洋医学は、身体の内側から治療する、あるいは病気になる前に防ぐ治療法です。 西洋医学が病気やケガの治療を目的にしているのに対し、東洋医学では、病気やケガの原因が何であるのか突き止め、その原因の除去を目的にしています。 病気やケガの根本的な原因を探るため、東洋医学では患部だけではなく全身を診てから治療法を判断します。東洋医学的治療ではひとりひとりの体質を考え、自然治癒力を高めて身体を治していく治療ですから、治療効果を感じるまでに多少の時間が掛かります。自分が持っている「自然治癒力」を高めていく治療ですから、副作用の心配がなく再発する可能性も少ないという利点があります。東洋医学の弱点は、事故などの緊急性の高い症状に対して手立てが少ないというところです。東洋医学は数千年の歴史を持つ古典医学で、近代西洋医学とは比べ物にならないほどの経験値を持っています。現代はデータに裏付けされた実証主義が世の主流ですから、東洋医学は信用できないと言われることもあります。しかし、最近では、予防医学や代替医療として、西洋医学と東洋医学を並行していくというのが主流になりつつあります。
◆東洋医学における陰陽論
東洋医学では、人と宇宙(自然)を一つの統一されたものとみなしています。その統一された世界のなかに、「陰」と「陽」という2つの概念があります。それらは、対立したり、制約したりしながら共存していると考えています。つまり、人の健康も「陰」と「陽」のバランスであると考えます。人が健康な状態でいるときというのは、からだにおける陰と陽のバランスが上手く保たれています。しかし、陰陽のどちらかが強くなりすぎたり、逆に弱くなりすぎたりすると、陰陽のバランスが崩れて健康ではなくなっていきます。人には本来、陰と陽のバランスを自然に回復する機能や能力が備わっています。夏になれば、からだの内部の陽が強くなりますから、汗を出して陽を下げるようにします。冬には汗を出す器官の汗腺を閉じて陽が逃げないように、弱くならないように調節します。この働きは、自律神経の働きに見ることができます。「交感神経」と「副交感神経」とのバランスで生命維持をコントロールしている機能のことを自律神経と呼んでいます。活発に行動しているとき、「交感神経が優位」といいます。逆にゆったりくつろいで休息しているときを「副交感神経が優位」と表現します。人は、夢中で獲物を追いかけているときなど、交感神経が優位になっているときには、ちょっとした怪我にも気づかないくらいの状態になります。しかし、これだけでは身体は細菌にむしばまれてしまいます。そこで副交感神経が優位になるタイミングも必要になります。人はゆったり休んだ時に痛みを感じ、怪我していることに自分自身で気づいたりします。このようにして、人間の身体に備わっている自律神経の機能がバランスを保っています。