このお店が全てを体現していた。季節を感じさせる美しく豪快な前菜から始まり、どれもこれも期待を裏切らない料理の数々。春のホワイトアスパラガス、夏のトウモロコシのズッペッタ、秋のラディッキオとチーズのロースト。それぞれの季節ごとの特別感が、見るからにウキウキさせる。
パスタは、オイルベースでもトマトベースでも、口に入れた瞬間の感動が忘れられない。カニとからすみ、万願寺唐辛子と牛乳のエスプーマトマト。美味しすぎて涙が出る経験は、まさに一生の宝物。
メインのシンプルな肉と野菜のローストは、素材の美味しさがストレートに感じられる。時にはソースで味わうのも良いが、この素朴さこそが、真の美味しさなのだと教えてくれた。
ドルチェもまた、この上なく素晴らしい。ブラッドオレンジのソルベ、セミフレッド、キンカンとヨーグルトのスムージー。ティラミスがこんなに美味しいなんて、初めて知った。
そして、マキノさんのサービス。適度な距離感で、温かくスマート。小さな気配りが、心に深く響く。一人で全てをこなすその姿勢に、ただただ敬服するばかり。
価格は、その内容を考えれば信じられないほどリーズナブル。この上ないコストパフォーマンスに、何度も足を運ぶ理由があった。
そして、その静かで光が溢れる空間が、何よりも好きだった。閉店のニュースは、受け入れがたい現実だ。原田シェフには、この店の価値をもう一度、思い出してほしい。こんなに素晴らしい店を失うことの意味を。
高級レストランでさえも、ここほどの満足感を得ることはできなかった。だから、終わりにはしたくない。アロマティカの復活を心から願っている。ありがとうの言葉では足りない、この思いを胸に、再開を待ち続ける。