かつて青梅街道に都電が走り、新宿の街がまだ今日のような姿ではなかった時代。西新宿6丁目、十二社通りの片隅に、心温まる小さな中華料理店「新華月」がありました。戦後の新宿の発展とともに、この店も成長してきました。
店は新宿通りの一等地にありながら、昭和の雰囲気を色濃く残していました。高級中華ではなく、身近で親しみやすい大衆中華を提供し、懐かしい味で多くの人々に愛されてきました。
しかし、時代は移り変わり、店の閉店が決定。さらに原発問題による中国人従業員の帰国など、様々な事情が重なりました。閉店を知ったお客さんが殺到し、店は最後の最後まで賑わいを見せました。従業員の皆さんは休む間もなく、終わりまで全力を尽くしてくれました。
新宿から昭和の名残を感じさせる名店がまた一つ姿を消しました。コマ劇場に続き、「新華月」も歴史の一ページに名を刻みました。店主の伯耆さん、マネージャーの小豆畑さん、調理の小池さん、そしてその他の従業員の皆さん、長年のご苦労と心温まる美味しい料理に感謝します。皆さんのこれからに幸多からんことを心より願っています。